最高裁での上告理由書受理・却下の判断基準について

 最高裁判所における上告理由書の受理・却下に関する判断基準については、以下のような判例が参考となります。主に**民事訴訟法第312条**(旧法では第318条)の「上告受理の申立て」や**刑事訴訟法第405条**・**第406条**の上告理由に基づく判断が問題となります。


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### **1. 民事事件における判例**

#### **(1) 上告受理の基準(民事訴訟法第312条)**

最高裁は「**法令の解釈に関する重要な事項を含むもの**」または「**その他の最高裁として判断を示す必要がある事案**」に限り受理を認めています。


- **最判昭和42年11月8日(民集21巻9号2439頁)**  

  「上告受理の申立ては、原判決に憲法解釈の誤りや法令解釈上の重要な誤認がある場合に限られる」とし、単なる事実誤認では受理されないことを明示。


- **最判平成15年7月10日(民集57巻7号973頁)**  

  上告受理の要件として、「**判例の変更が必要な場合**」や「**法令の統一解釈が求められる場合**」を挙げ、個別事案の事実誤認は却下対象と判断。


#### **(2) 却下事由の例**

- **最判平成20年3月10日(民集62巻3号665頁)**  

  上告理由書が「単なる事実認定の誤り」を主張するに留まる場合、受理要件を欠くとして却下。


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### **2. 刑事事件における判例**

#### **(1) 法令違反・判例違反(刑事訴訟法第405条)**

- **最判昭和23年7月29日(刑集2巻9号1013頁)**  

  憲法違反や最高裁判例と相反する判断が下された場合、上告理由として受理。


- **最判平成27年10月19日(刑集69巻6号610頁)**  

  原判決が「**明らかな事実誤認**」であっても、法令解釈の問題に直結しない限り却下。


#### **(2) 量刑不当(刑事訴訟法第406条)**

- **最判昭和58年4月26日(刑集37巻3号315頁)**  

  量刑が「**社会通念上著しく不当**」と認められる場合に限り受理。単なる量刑の軽重は却下対象。


#### **(3) 却下事由の例**

- **最決平成18年3月27日(刑集60巻3号381頁)**  

  上告理由書が「**抽象的な憲法論**」に終始し具体的な違反状況を示さない場合、却下が適法と判断。


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### **3. 共通する判断基準の要約**

1. **憲法解釈・法令解釈の誤り**:原判決に法的解釈の誤りがある場合に受理。

2. **判例との抵触**:最高裁判例と矛盾する判断が問題となる場合。

3. **事実誤認の限界**:単なる事実認定の誤りは原則として却下(刑事事件の「明らかな事実誤認」を除く)。

4. **新規性・重要性**:法律上の新たな争点や社会的影響が大きい事案。


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### **補足**

- **受理率の低さ**:最高裁の上告受理率は極めて低く(民事で数%程度)、大部分が「**上告棄却**」または「**受理却下**」となる。

- **形式的不備**:上告理由書の記載が不十分(例:具体性を欠く)場合も却下対象(**最判平成12年2月10日**など)。


裁判例の詳細は、判例集(『最高裁判所判例集』)やデータベース(裁判所ウェブサイトやLEX/DB等)で確認可能です。

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