残業代請求訴訟に於いて被告会社側に発生する立証責任は何か?

 残業代請求訴訟における被告企業側の立証責任

残業代請求訴訟において、被告企業側(使用者側)には、主に以下の点について立証責任が発生します。

 * 労働時間に関する立証責任

   * 適正な労働時間の把握: 労働基準法により、使用者は労働時間を適正に把握する義務があります。労働者が残業代を請求した場合、企業側は、労働者の実際の労働時間(始業時刻、終業時刻、休憩時間を含む)を正確に記録し、その記録に基づき反論する責任があります。タイムカード、入退室記録、PCログなどの客観的な記録が重要な証拠となります。

   * 法定労働時間・法定休日労働時間の否定: 労働者側が主張する時間外労働や休日労働が、法定の時間を超えていないこと、または適切に処理されていることを立証する必要があります。

 * 賃金に関する立証責任

   * 割増賃金の支払い: 労働者に対して、法定の割増賃金(時間外労働、深夜労働、休日労働に対する割増賃金)を適切に支払っていることを立証する責任があります。給与明細、賃金台帳などが証拠となります。

   * 固定残業代(みなし残業代)の有効性: 固定残業代制度を導入している場合、その制度が有効であること(例えば、固定残業代として支払われている金額が、実際に発生した残業時間に対応する割増賃金を下回っていないこと、通常の労働時間部分と明確に区別されていることなど)を立証する必要があります。

 * その他

   * 労働時間免除の根拠: 営業職の外回りなど、労働時間の算定が難しいとされる業務において、労働時間の一部が労働時間から除外されるべきであると主張する場合、その根拠(例:事業場外みなし労働時間制の適用要件を満たしていること)を立証する必要があります。

   * 残業代不発生の根拠: 管理監督者であるため残業代が発生しないと主張する場合、その労働者が労働基準法上の「管理監督者」の要件を満たしていること(職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等の待遇などを総合的に判断)を具体的に立証する必要があります。

ポイント:

残業代請求訴訟においては、労働時間の把握に関する資料が最も重要となります。企業側は、日頃から労働時間を適切に管理し、記録を残しておくことが、万が一の訴訟に備える上で非常に重要です。


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