賠償予定の禁止の例外と許容範囲について
労働基準法(以下「労基法」)第16条では、「**賠償予定の禁止**」が規定されており、使用者は労働契約において、労働者が損害を生じた場合に事前に賠償額を予定する契約(賠償予定)を結ぶことが原則として禁止されています。ただし、例外が認められる場合があります。以下に、許容される対象物や範囲について解説します。
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### **1. 原則的な禁止(労基法第16条)**
- **趣旨**:労働者に対する経済的圧力を防ぎ、不当な拘束を排除するため。
- **禁止内容**:
- 労働契約で「損害が発生した場合に〇〇円を支払う」と事前に定めることは無効。
- 例:業務ミスによる損害について、あらかじめ固定額を賠償させる契約は不可。
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### **2. 例外として許容される場合**
#### (1)**民法上の不法行為に基づく賠償**
- 労働者が故意または重大な過失(業務外の私的行為を含む)で使用者に損害を与えた場合、民法(第709条・第715条)に基づき、**実際の損害額**を賠償させることが可能。
- **例**:
- 労働者が故意で機械を破壊した場合。
- 重大な過失(例:飲酒運転で会社車両を事故させた)など。
#### (2)**特別法による例外**
- **「職業訓練のための費用返還」**(労基法第15条の2):
- 使用者が労働者に専門的・技術的な職業訓練(例:海外研修、高額な資格取得)を行い、訓練費用を負担した場合、**一定の条件**(訓練後の最低勤務期間等)を満たせば、未勤務期間に応じた費用の返還を求めることが可能。
- ただし、不当に高額な賠償予定は無効。
#### (3)**就業規則・労働契約での合理的な定め**
- 労働者の故意・重過失による損害について、就業規則で具体的な賠償基準を定めることは可能(ただし、実際の損害額との均衡が必要)。
- **例**:
- 業務用パソコンを故意に破損した場合の修理費相当額。
- 顧客への著しい迷惑行為による会社の信用毀損で、具体的な損害額が証明できる場合。
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### **3. 賠償範囲の限界**
- **実際の損害額を超えないこと**(逸失利益を含む)。
- **労働者の収入・経済状況を考慮した相当性**が必要(過酷な賠償は無効)。
- **懲戒処分(減給等)との重複禁止**(労基法第91条)。
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### **4. 判例の傾向**
- **許容例**:
- タクシー運転手が事故を起こし、会社が賠償金を支払った後、運転手に求償した事案(最高裁昭和63年3月28日)。
- **無効例**:
- 未払い残業代の代わりに「違約金」を労働者に支払わせる契約(事前の予定は不可)。
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### **5. 注意点**
- 賠償を求める場合は、**損害発生の証明**と**労働者の過失の程度**を明確にする必要があります。
- 就業規則に定める場合は、**周知と合理性**が要件です。
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### **まとめ**
賠償予定は原則禁止ですが、**故意・重過失による実際の損害**や**特別法・就業規則の合理的な定め**に基づく場合は例外となります。範囲は「実損害額」以内で、労働者の生活を圧迫しないことが条件です。具体的事案では労働局や弁護士への相談が推奨されます。
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